保育のこれからに向けて思うこと
今、保育を取り囲む制度環境は激動の渦にあります。
まず、福祉全体の流れである「措置から契約へ」
先日の事業仕訳で話された「運営費国庫負担の解消」
ちょっと待ち遠しい子ども手当。
そして保育の慢性的な問題である待機児童問題、
これを解消すべく決定されようとする
基準の撤廃と入所定員増。
これらは、1つ1つが分離しておらず、
どれもが密接な「詰め合わせ商品」のようなものです。
私としては、これらの流れには、基本反対です。
何故なら、これらが子どもの健全な成長を保障し、
またそれができる社会をつくれるとは到底思えないから。
その根拠についても縷々書きたいところですが、
基本このブログで政治的な是非は極力触れない、と
自分に課しているので、ここでは最低限しか触れません。
今、ここで書きたいのは、もっと個人的な思い…。
反対の立場を言うと、こんなリアクションが来ます。
「そりゃ保育園で働く、保育園に子を預けられた
あなたには待機児問題は他人事でしょうよ」
「制度改正で給料が下がるのが嫌なんでしょ」
「保育園は詰め込まれない方が楽だもんね」等など。
もちろん、実際はここまで無礼な言い方はされませんが、
とても心外であることに変わりはありません。
あくまで、子どもの発達を真剣に見つめ、
「声なき子どもの声」を代弁しているつもりです。
例えば私は(こんな事言ったら仲間から首絞められるかも)
保育士の賃金水準は低いままでいいと思います。
真夏も真冬も、表で休憩なしに走り回る重労働ですが、
好きな人にとっては、これ以上ない楽しい仕事。
加えて、誰にもペコペコしなくていいし、
失業する不安もほとんど無縁です。
これで安月給に不満を言ったら、バチが当たります
(ただ、今以下にするのは最低賃金法の改正が必要です)。
しかし、子どもが過ごす保育環境は、
もっとゆとりがあってほしい。現状は、
走り回るのも、午睡するのも、食事も、全て同じ部屋、
そこには、テーブルもタンスも、遊具も作品もある。
園によっては保育士の事務もそこでやったりします。
それで、幼児一人あたり畳一枚程度、
先進国の中でジリ貧の面積基準、
しかもこれ、戦後の混乱期から改正されてないんですよ。
これで健全な保育が可能とは、思えませんから。
つまり、お金よりも環境を優先して訴えたいのです。
待機児問題や予算の状況は、分からなくありません。
ですが、待機児童の問題は数字に出しやすいし、
困るのは「大人」だから、わかりやすいのです。
でも、詰め込みや基準の緩和で環境を妥協することは
もの言えない「子ども」の発達に影響があるんです。
働く大人には、ちょっと問題が見えにくい、
だからこそ、待機問題だけに終始しちゃいけないんです。
それに、考えてみて下さい。
これだけ少子化が問題になっているのに、
待機児が出るっておかしくないですか?
私は、今の待機児問題は、それだけ日本が、
保育や子どもを置き去りにしてきた結果だと思います。
これは、待機児問題にすり替えられる訳にはいきません。
例えば、「待機児童問題が深刻だから、
(今と同程度かそれ以上の質の)園を増やしましょう。
ただ、完成まで時間がかかるから、
それまでの間、詰め込みで我慢して下さいな」
って言うなら、話は分かります。
でも、足りない⇒詰め込むって方法では
子どもの環境はなし崩しにされる、
それでは、とても応じられません。
と、子どもの代弁者として
訴えてるだけのつもりなんですがね。
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コメント
こんばんは
保育の問題はとっても難しいですね
働きたくても保育園に入れないという状況は本当にたくさんあるのです。が、すとれちあ。さんがおっしゃるように、子どもの立場から考え、「とりあえずがまんしてね~」でいいのかって、そういうところもわかります。
また、保育園を増やそうにも場所もお金もなかったり、人もいなかったり。なんでこんな風になっちゃったんでしょうかね。
少子化問題は人々の意識が真剣にこれに取り組もうという方向に向かわない限り、現在のように対処療法的な対応策しかとれないような気がします。社会全体がもっと真剣になってほしいです。
投稿: ゆうまま | 2010年1月21日 (木) 23時21分
ゆうままさん おじゃりやれ
待機(量)の問題と処遇(質)の問題、どちらも重要なんです。
どちらかを妥協して、どちらかを解決するというのが乱暴な話で…。
ただ、待機は数で表れるし困る主体が大人だからわかりやすい。
だから、私たちは待機だけを問題視してしまう傾向があります。
ここに、両問題のシンメトリーでないところがあります。
そもそも、面積や人員配置の基準、予算さんの比率、
どちらで見ても、日本は保育を置き去りにしてきた、
という印象です。
待機の問題も、そもそもそこが端だと思います。
投稿: すとれちあ。 | 2010年1月22日 (金) 15時56分
すとれちあ。さんのおっしゃる通りですね!!
保育園の実態を生で見ているすとれちあ。さんのお話を聞いて
余計にそう感じます。
私にもすごく分かりやすく書いて頂いてたので(^-^;
子供の環境を一番に考えてこれらの問題を解決していこうと
する(本当に現場を分かっている方)政治家のもとで
色んな政策が決まっていくといいですよね・・・
投稿: ぴぐもん | 2010年1月22日 (金) 18時24分
おじゃまします。
ようやくたどりつきましたわ。
充実した生活を送っとられるようで安心しました。
保育園足りないならもっと増やせばいいのに、と単純に思っていたけれど、現状は解決しないといけないいろんな問題があるのね。。。これらが解決して保育園が質も量も十分になれば、子供を産む人はもっと増えると思うけどな。
投稿: あき | 2010年1月23日 (土) 11時03分
ぴぐもんさん おじゃりやれ
何か、「政治的な是非は…」とか言っといて、
おもっきり是非述べちゃってる気がします
政治とか行政とか、詳しくはありませんが、
その人たちの仕事って、市民国民が安心して暮らしやすい社会を
作っていくことなんじゃないか、としたら、保育や介護って
政治や行政がやることの中心なんじゃないかって思うんですが、
なかなかそうはいってませんよね。
難しい状況はあるのでしょうが、私たちにとって何が大切か、
私たち自身が常にそれを考えていないと、
いい世の中にならないと思います。保育に限らずね。
投稿: すとれちあ。 | 2010年1月23日 (土) 19時17分
あきさん
おじゃりやれ コメントありがとうございます。
あきさんのその、「単純な」思い、出発点はそこですよね。
足りないなら(足りない=必要って考えていいと思いますが)
質のいい(少なくとも、悪くない)のを増やせばいいと思います。
必要なことには、それなりに予算を振り分けるのが、政治でしょう。
女性を「産む機械」とか言っちゃうくらい、少子化が深刻なら
本気で子育てをしやすい環境について、考えてほしいですね
(考えてほしい=私たちが考えなきゃいけない、だとも思いますが)。
投稿: すとれちあ。 | 2010年1月23日 (土) 19時20分