スローライフな音楽Ⅸ~ シューベルト作曲「おやすみなさい」
最近毎日寒いですね。
冷え性のワタクシすとれちあ。には辛い季節。
横浜では、明日から暖かくなる予報ですが。
でも、寒くない冬ほど、寒々しいものはありません。
日も落ちた夕方、
身体を温めてくれるスープや暖炉はとても素敵ですが、
それは、早く沈む夕陽や凍えるような冷たい北風、
そんな引き立て役があるからこそ、ですよね。
こんな思いにぴったりなのがこの曲、
F.シューベルト作曲「冬の旅~おやすみなさい」
「アヴェマリア」「野ばら」「ます」、
数多の名曲を残した歌曲王フランツ・シューベルト、
どちらかと言うと暗いイメージのあるこの人の作品の中で、
晩年のこの作品には、最もクラ~い雰囲気が漂っています。
それもそのはず、W.ミュラー作のこの詩は
冬空の下、恋に破れた傷心の青年を描いています。
愛をささやき合った春の日はもう帰らない、
私の居場所はもう、この町にはない、
青年は、今はもう、「元…」とつけるべき恋人の住む家に
「おやすみなさい」と書いた手紙を置いて
「あなたの夢を妨げないようにそっと」扉を閉めます。
ただ、この手紙を読んだあなたが、
私の本当の気持ちを知ってくれますように!
その思いを胸に、足を旅路に向けて踏み出す。
日本よりはるかに緯度が高いドイツでのこと、
その寒さ、夜の長さは私たちの冬を凌駕します。
きっと、その足が引き摺る道はどこまでも凍っていて、
目に入る景色は白ばかり、
いや、長い夜はそれすら見せてくれなかったかもしれません。
そして、私が連れ添うのは、月光の映す私の影、
私を温かく待っていてくれるのは、死ただひとり。
合唱ではないバリトンのソロ、沿うのはピアノだけ、
ひたひたと雪道を歩く情景が目に浮かびます。
最初は短調で暗い曲調なのに、
最後、それはちょうど、恋人の家を去ってからは
長調の明るい曲調に変わります。
それは、誰も愛してくれないこの町よりも、
「死」という唯一の拠りどころのある旅の方が
いくらか希望が持てるからかもしれません。
凍てついた道を歩く冬の旅は、始まったばかりです。
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コメント
シューベルトは確かに暗いイメージがありますね。昔読んだ伝記もウツウツしたトーンだった気がします。内容は忘れちゃいましたけど。
ドイツの風土かあ。深く考えたことがありませんでしたが、歌や曲ってその国の文化を映し出すんですね。確かにその通りだなあ
投稿: ゆうまま | 2010年1月18日 (月) 19時42分
ゆうままさん おじゃりやれ
ウツウツとしたイメージ、音楽に限らず、
芸術家の1つのステータスかもしれませんね。
ヴィヴァルディやチャイコフスキーが好きな私は、
どちらかと言うと明るい音楽が好きですが、
その反動と言うか、シューベルトの暗さも素敵だと思います。
音楽やその他の文化を楽しむ際、その地域性や時代性を頭に置くと、
また違う面白さがありますね。
投稿: すとれちあ。 | 2010年1月19日 (火) 09時07分
すとれちあ。さん
この曲、そんな背景があったんですね。
シューベルト、確かにそんなイメージです。
すとれちあ。さんの朗読で、聴いてみたいわ~
ヴィヴァルディやチャイコフスキー、なんだか華やかで
明るくて、私も好きです
投稿: ゆめ | 2010年1月19日 (火) 22時41分
ゆめさん おじゃりやれ
私が朗読したら、「冬の旅」が太陽燦々になっちゃいますって
華やかなのも、暗い(表現悪いですが)のも、
どちらも音楽・芸術として魅力的ですよね。
投稿: すとれちあ。 | 2010年1月20日 (水) 18時50分
僕もシューベルト、大好きです。
今はあまり聴きませんが若い頃よく聴きました。
肝心の声楽はあまり聴かないのですが、、。
好きな曲は「鱒」と「死と乙女」、それと「即興曲」の或る曲あたりです。
ところで科学の分野もそうですが特に芸術の分野で天才と言われる人の多くは所謂アスペルガーではと思われます(僕の勝手な思い込みですが)。彼らは現実の社会で生きていくのが下手です。シューベルトの場合は気弱で内省的、瞑想的な性格も災いしたようですが。
投稿: ばか猫 | 2010年1月20日 (水) 18時55分
バカ猫さん おじゃりやれ
きっとバカ猫さんはいろんな音楽をご存じでしょうね。
以前、RV93がお好きっておっしゃってたけど(私も好きだけど)
シューベルトは全く逆の雰囲気の曲って感じですものね。
私も、声楽よりピアノソロとかの方が好きです。
即興曲、いいですよね。
アスペルガー、私もその通りだと思います。
最もポピュラーなところで言えば、イチロー選手からも
そんな印象を受けます(判定が出るとか、そんなレベルではなく)。
狭いと言えば狭いのかもしれないけど、
その分、1つのことには長じやすいのでしょうね。
いろんな人の能力がいかんなく発揮される世の中であってほしいな、
と思います。
投稿: すとれちあ。 | 2010年1月21日 (木) 14時33分