スローライフな音楽Ⅹ~荒城の月
作曲 瀧廉太郎 作詞 土井晩翠
春高楼の花の宴 巡る盃影さして
千代の松が枝分け出でし 昔の光今いずこ
秋陣営の霜の色 鳴きゆく雁の数見せて
植うる剣に照り沿いし 昔の光今いずこ
今荒城の夜半の月 変わらぬ光 誰がためぞ
垣に残るはただ葛 松に歌うはただ嵐
天上影は変わらねど 栄枯は移る世の姿
映さんとてか今もなお ああ荒城の夜半の月
(しかも、その歌については4回目…)、
更にさらに、「花」と同じ瀧廉太郎作曲の歌です。
それを敢えて取り上げたのは、別にマイブームじゃなく
(元々、瀧廉太郎が大好きなのですが)
一応それなりに、思うところがあったからです。
私は、全ての歌の中で「花」が一番好きですが、
「荒城の月」に対する日本人の思いが、
この姉妹作を凌駕しているのは、疑いないでしょう。
そしてそれは、日本人特有の思いなのか、
外国の著名な合唱団やソリストがこれを手がけても、
今一つ、ピンと来ない気がします。
何ていうか、歌に「魂」が感じられないと言うか…。
面白いですよね、「花」ならそんな違和感はありません。
この歌の描かれるそんな「日本の心」
それが、侘び寂びなのでしょうか。
松林の中、佇む朽ちた城閣、
蔦の這う庭、苔むした石畳、乾いた池、
そこに差すのは、皮肉にも大きく明るい満月。
きっと、在りし日の春爛漫の夜、
大名以下、大勢の武士や重臣が、
桜の下で酒宴を繰り広げたのでしょうね。
池の水面に映った大きな月は、
錦鯉の立てる波に揺れています。
そんな昔の光、今いずこ。
月だけが変わらず、朽ちた城に差している。
この歌で描く、私のイメージです。
桜の花の命は短いからでしょうか。
その妖しくも美しい姿は、この歌の情景そのものです。
そして、これは過去の歌でしょうか、
いえ、私は先日、この光景を目にしました。
先週の土曜日、東京・横浜では霙が落ちましたね。
つい1週間前、花の宴が繰り広げられた公園にも
人の姿はなく、ただただ降りしきる霙まじり、
桜の枝を飾るのは、花ではなく、雪でした。
まさに、昔の光今いずこ、と言った趣き。
この寒さ、素人ながら思うのは、やはり異常気象です。
人の営みだけが原因とは言い切れませんが、
日増しに速くなる人の営み、加熱する乱痴気、
やはり、それが関係していないとは思えません。
皮肉にも、桜の下で毎年繰り広げられる「お花見」は、
その象徴のようにも、思えます。
「昔の光今いずこ」この歌は、
驕れる人の営みを戒めているように、聴こえませんか。
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コメント
今日は茶道と書道を素材にあいさつ文を作っていました
昔の光今いずこ
その通りです
文化は時代とともに変わっていくものなので、スタイルを変えるのは良いと思いますが、日本人が大切にしてきた心が失われていくのはさみしいものです
刺激的な現在だからこそ、昔をしのぶことも大切なんだなあと思いました
投稿: ゆうまま | 2010年4月20日 (火) 22時40分
ピアノの弾けない母が、唯一弾ける歌です。
子どものころから♪ミミラシドシラ♪はいつも聞かされていました。
懐かしいです。でも、歌詞は初めて知りました(笑)
投稿: クロッカス | 2010年4月21日 (水) 00時18分
ゆうままさん おじゃりやれ
「変化を受け入れない」ことと「古いものを大切にすること」
「変化を受け入れる」ことと「古いものを大切にしないこと」は
どちらも、似ているけどイコールではないと思います。
今や変化を楽しむことは素晴らしいことだと思いますが
昔の文化や、そこから来る教えは同じくらい大切にしたいですね。
私のブログタイトル「ゆうべ浜辺をもとおれば」って、これも歌詞ですが
この後に続くのは「昔の人ぞ忍ばるる」ですからね。
投稿: すとれちあ。 | 2010年4月21日 (水) 12時36分
クロッカスさん おじゃりやれ
素敵なお母様ですね
私もピアノ、(少しは)弾きますが、私が弾くと、記事にも書いたように、
間の抜けた昼間みたいな荒城の月になります
それに、歌詞も素敵なんですよ
この歌は、歌詞が先にできた曲なので、
詩としても堪能できると思います。
投稿: すとれちあ。 | 2010年4月23日 (金) 13時22分