保育現場から見た日本Ⅲ
日本社会って、どうもうまくいってない…、
その原因が、「基本的自尊心」のなさである、
そのルーツは、乳幼児期の頃の処遇ではないか、
と、前回までで書きました。
さて、我が国の子どもの処遇、ですが、
現状決して、豊かとはいえません。
私は保育園で働く者なので、そこからの問題提起ですが…。
まず、誰にも問題の見えやすい待機児童問題。
働きたいのに働けない人がいる、とよく言いますが、
それだけだったら、大人の都合でしかありません。
「みんなが質のいい保育」を受けられる事で、
大人も安心して働けるし、子どもも健全に成長する、
結果、最初から書いている「いい日本」ができる。
だから、問題意識は量だけに留まらない、
質と量の両方を探らなければなりません。
保育園で子どもが過ごす時間は、平均して11時間
(親の勤務時間9h+通勤2h)、起きている時間の大半です。
そこでの経験が、人間形成に大きな影響力を持つ、
私のような発達についての素人でも、それはわかります。
私は公私両方の局面で、いろんな保育園を見てきました。
感じるのが、「子どもが溢れている」ということ。
大人なら絶対にストレスになる人口密度
(子どもは身体は小さいけど、動きは速く大きいので
その意味では大人以上の面積を必要とします)と
決してゆとりあるとは言えない保育士数。
公立や社会福祉法人立の保育園は比較的良いのですが、
建設に補助金の出ない民間の保育園は本当にイモ洗い、
無認可の保育園になると、環境は更に厳しくなります。
これ以上の詰め込みは明らかに人権侵害、
きっと、誰でもそう感じることでしょう。
この、決して豊かとは言えない保育園の面積や人員は
「児童福祉施設最低基準」で定められたものです。
つまり、この基準そのものが決して豊かではない、
と言っていいと思います。
この「最低基準」、戦後の混乱期に
「みんな貧しいから、子どもに豊かな環境は無理だけど
まず頑張って働いて、少しずつ改善していこうね」
そんな趣旨で、ごく最低限のレベルで制定されました。
ところが、戦後60余年、ほとんど改善されず、
現在に至りました。その結果が、今の「イモ洗い」です。
日本国民、戦後のようなバラックに住んでいますか?
重い荷物をリアカーで運ぶ必要ありますか?
いろいろあるけど、あの頃よりずっと豊かになりました。
それでも、貧しいままの水準を保ってしまいました。
他の先進諸国の基準と比べても、面積・保育士数とも
だいたい半分くらいしか保障できていない状態です。
待機児問題にしてもそう、現状こうなることは、
数十年前から、保育関係者や識者は予想し、
増園を求めてきたのに、それはほとんど叶いませんでした。
今、待機児を理由にこれ以上子どもを詰め込むことは、
大人たちの無策を子ども達に押しつけるだけだと思います。
日本は、子どもを置き去りにして大人が豊かになった国、
私はそう思っています。
話は振り出しに戻りますが、
そんな環境下で育てられた日本の子どもたちが
大人になってつくってきた国が、今の日本です。
「三つ子の魂百までも」と頭に置きながら
外国に比べて貧しいる保育環境を比べると、
日本社会の「うまくいかなさ」はむしろ当然に見えます。
もっと、広い空間や自然の中で思い切り遊んだり、
大人とゆったり心を通わせる経験をたくさん積んだら、
「基本的自尊心」は育まれたのではないでしょうか。
みんなが幸せになれる素敵な日本社会は、
そこからできるのではないでしょうか。
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コメント
こんにちは
子ども手当は満額支給はなくなるようですが、この財源を「保育所の整備(保育所を増やす)に」とすぐに持っていく世論も不思議なものだと思いますね。保育所が必要じゃないけれど子どもにかかるお金はたくさんあります。医療も、教育も。まあ、保育がわかりやすいのかもしれませんが。。。
そもそも子育ての根本は家庭の話しですが、行政はなかなか家庭の中まで入っていけないようなところがあるので、ついつい保育園を。。ということになるんでしょう
自分たちの子どもが親になるころ、日本はどうなっちゃうんでしょうね
それなりに子どもたちはすごすんでしょうけれど、いまよりず=っと冷めた社会になりそうな気もします。
投稿: ゆうまま | 2010年6月13日 (日) 13時15分
ゆうままさん おじゃりやれ
それ、すっごく分かります。
私は保育関係者だし、その立場から、(質のいい)保育所整備を、と
考えていますが、保育だけが子どものためじゃありませんよね。
他の業界や政治家、国民から「~だって大切じゃないか!」みたいな、
子どものことを真剣に考えた反論が少ないのが、寂しいところです。
以前、「わかりやすさの虜になるなかれ」って書きましたが、
よく考えないと分かりにくい施策は置き去りになっちゃいますよね。
投稿: すとれちあ。 | 2010年6月14日 (月) 11時14分